【完】ボクと風俗嬢と琴の音

特別、と自分の素直な言葉を口に出したら
ハルは物凄く驚いた顔をしていたと思う。


きっと本当の本音を口にしたら、ハルの笑顔を壊してしまう気がしたんだ。
だからこの日、自分の気持ちを完全に封印する事を決めた。



「ハルと一緒に過ごして同じ楽しさを共有していくうちに、知らず知らずにハルはあたしの特別な人になっていったの。
ほんとうに、きっと少しずつ…時間をかけて
だからきっとこれはハルの妹みたいな感情なんだと思う。
大好きなお兄ちゃんを取られてしまうーっていうヤキモチ…
だからあんな風に山岡さんに嫌な態度を取ってしまったの。ごめんなさい……」


「琴子、でも…俺は……」


ハルが何かを言いかけた。
わたしは素直な気持ちを伝えた。ただ’好き’だという感情だけを隠して
あなたをお兄ちゃんのような存在だと言って、それがわたしに出来た精一杯のあなたへの気持ちの伝え方だったのだから。


顔を上げて、涙はグッと堪え、あなたが好きだと言ってくれたように、豪快に笑うから。
そんなわたしを覚えていて


「山岡さん、めっちゃ良い人じゃーん!
あんなに美人なのに飾らないで、大輝だって何だかんだ文句言ってたけど、大輝は嫌いな女にはあんな態度取らないよ~
だからきっと、山岡さんは良い人なんだと思う。
ハルももう一度考えてみたっていいんじゃない?」
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