【完】ボクと風俗嬢と琴の音

「そんな人をお化けみたいな……」


「ご、ごめん、山岡さん。考え事をしていたら」


「だってエレベーターの前で石みたいに固まってる人がいるんだもん。
さっきから2回エレベーター行き来してますけど」


その時ちょうど3回目のエレベーターが到着して
山岡さんも一緒に乗り込んできた。


「わたしはちょっと事業部に用事があって
別にあなたと一緒のエレベーターに乗りたいとかそういうのではないので」

少しだけツンとして言って、すぐにこちらを向かって悪戯な笑顔を見せる。


「いやぁ~…山岡さんはすっかり毒舌になっちゃって…」


「だって晴人くんはこういう子の方が好きなのかもって
前ふたりでよく食事に行った時より全然楽しそうだし
計算です。」



きっぱりと言い切って、舌を出す。
やっぱりその仕草ひとつ取ってみても山岡さんは完璧で
付き合えたらきっと楽しいんだろうなぁって思う。
琴子の言う通り…あぁそんなの駄目だ。それじゃあ山岡さんの気持ちを利用してしまうようなもんじゃないか。

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