【完】ボクと風俗嬢と琴の音
「あなたも無神経な人だけど
彼女はもっと無神経な人だわ」
「いや、それは……確かに俺は無神経かもしれないけど
琴子が俺を男としてちっとも見てないと言うのは当たり前というか
琴子の周りには西城さんもいるし、俺より全然魅力的な人がいるからそういう対象には見れないのは当然っていうか」
「あなたは素敵な人よ!」
大きな目をカッと見開いて、山岡さんは少し大きな声で言った。
その余りの熱情に驚いてしまって、その場に固まってしまった。
「男の人として、あなたは素敵な人…だから自分をそんな風に言わないで。
過去に戻れるなら、自分をぶん殴ってやりたい。
あなたはいっつも誠実で真っ直ぐで…わたしに無いものを沢山持っている人だから。
だからあなたは自分を卑下するような事は言わないで」
顔を真っ赤にさせて、体まで震わせえてそう言った彼女の視線はやはり下を向いたままだった。
掴まれたシャツ越しから、彼女の気持ちが強く伝わってきた。
「山岡さん……」
「わたしはまだ晴人くんが好き。…きっと前よりずっと好き。
琴子さんとの生活は後1か月ちょっとでしょ?
ゆっくりでもいい…わたしの事も少しでいいから考えて欲しい…」