【完】ボクと風俗嬢と琴の音
全然タイプじゃない。
背なんかちんちくりんで、メイクも濃くて
カラコンでかすぎて怖いって思うし
金髪の子なんてテレビの中でさえ良いと思った事がないし、派手なぐるぐる巻きも好きじゃない。
煙草も酒も飲む女も嫌いだし
服装だって女の子らしくない。
物事をはっきり言って、すぐに人に喧嘩ごしになるし
口だって悪くて
全然好きじゃなかったのに…。
苦手なところばかりだと思ってたはずなのに、自分とは正反対の人間だと思っていた。
けれど好きじゃないところ以上に、俺は君の良いところを沢山知っている。
頭でイメージする好きなタイプの人よりも、君は俺の心へいつの間にか入り込んできた。そして深く深く突き刺すんだ。君が何気なく取る行動のひとつひとつが。
惨めだ。
俺がどれ程好きだと思っていたって、彼女は俺の事なんてちっとも恋愛対象じゃない。
好きだと意識してから、本当は一緒に住むのなんか全然平気じゃない。
けれどそれを言ってしまえば君は困るだろうから、そんな気持ちは自分の胸の奥の中に押し隠して
でも本音を言ってしまえば…それはとても汚いものだから。
俺は琴子を女として見ている。
恋愛対象として見ている。
触れたいし、いつかのあの夜みたいにキスだってしたい。
自分の中に性欲なんてダイレクトな物は少ないと思っていたはずなのに、好きな相手が無防備に目の前にいたら、そういう行為だってしたくなる欲求は人並みにあるわけで。