【完】ボクと風俗嬢と琴の音
ふたりで向き合って、オムライスを頬張る。
それを琴音がジーっと見つめている。
チュールを捧げよ、という目でジーっと見つめてくるのだ。
駄目だよ、と言っても琴音に甘い琴子はチュールをあげてしまって
琴音は紙まで食いちぎる勢いでがっついていく。
こんな何気ない光景が幸せなんだって、いつから思っていたのだろう。
きっとそれは随分前からで、気づいていたのに気づかない振りをしていたのかもしれない。
「そういやハル」
「ん?」
「ゲーム新しくアップデートされてたよッ
後でふたりでオンライン対戦しよう」
「マジで~?楽しみなんだけど。
あ、そういえば今日本屋行ったら、新刊!」
鞄の中から琴子と俺が共通で読んでいるコミックスの新刊を取り出すと
琴子は「おぉ…」と言って目を輝かせた。
「上道の歌の新刊やん」
「琴子が先に読んでいいよ?」
「いいと?!」
最近では、家にいる時は琴子が方言と標準語混じって話すから
それもすごく嬉しくて、距離が近づいていると勘違いしてしまったけど…
だって兄貴だし…
何か会話も妹の風花と似ているし、やっぱり兄妹みたいにしか見ていないのな。
分かってたけどさ…