【完】ボクと風俗嬢と琴の音
琴音に出会わなければ、絶対に選ばなかった職業だと思う。
けれど、わたしは過去に自分がしていた職業を決して忘れない。
お金の為に、身体を売ったという過去を決して亡き者にはしない。
全て、抱えて生きて行く。
手取りは、10数万。風俗をしていたわたしからして見れば、考えられない金額で
1日8時間働いて、月に8回の休み。不安も沢山ある、けれど計算してみれば、生きていけない給料では決してない。
福利厚生だってしっかりとしている。
狂ってしまった金銭感覚を元に戻すのは思っているよりずっと難しい事かもしれない。
でも、出来ない事はないんだと思う。何とか、なるのだと今は思う。
ハルと過ごした1年は、わたしの忘れていた’当たり前’を思い出させてくれた。
そして、教えてくれたのだ。
少しはしっかりできたのかな。
まだ分からない。
着々と進んでいく別れの日と、新しい始まりの日を夢見て
ハルと琴音と一緒に暮らした1年は、これからの人生で糧になると思う。
そう自分に言い聞かせた。