【完】ボクと風俗嬢と琴の音

「ねぇ、何度も言うようだけど、本当に家を出て行かないといけないの?」


「うん、いけない」


「これからもずっと井上さんと一緒に暮らして
琴音ちゃんもそこにはいて、そこで昼職をして
そういうのって絶対ダメなの?」


「絶対にダメ。
それはハルも困ると思うし
あたしは元々自立がしたくてハルと同居生活を始めたんだ
ハル、きっと山岡さんと上手くいくと思う。そうなった時にあたしと一緒に暮らしてる状態ってすっごく歪じゃない?
あたしが山岡さんだったら絶対に嫌だ。
でもハルは優しいから、あたしが、困るー住みたいー嫌だーって泣きわめいたら絶対に助けてくれようとするじゃん?
捨て猫の類は放っておけないタイプなんだよ…。そうなったら、あたしはきっとハルの未来を壊してしまう」


「それは琴子の考えであって、井上さんの気持ちとは違うわ……」


「わたしは風俗嬢だよ」


その言葉を言うと
一瞬ユカリは悲しい顔をした。
まるで自分を落ち着かせるよう、ミルクティーのカップに口をつける。
大好きな親友を困らせて、言葉を探させるような真似、したくないんだけど
それは変える事の出来ない真実な訳で

カップの内側を見ながら、ぽつりとユカリは再び口を開いた。



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