【完】ボクと風俗嬢と琴の音
「風俗嬢じゃないよ。風俗嬢、だったでしょ?」
「でも過去つーもんは消せやしないんだよ。
消しゴムで簡単に消して、はいこれでやり直しって出来たらそれはどれだけ良かったか。
あたしはハルといればいるほど、風俗嬢だった自分の過去を許せなくなる。
どんなに楽しく笑っててもどこかで絶対劣等感があって、悲しくなる日が来る。
ハルの事を好きになったのは後悔してないけど、風俗嬢だった事は少しだけ後悔してる
真っ新な人として、出会えたらとも考えた」
「誰にも許されなかったとしても、自分だけは許してあげてよ…。
少しくらい、自分に優しくしてあげなさいよ…自分に甘々だったのがアンタの良いところでもあったじゃないの。
それなら、こんな時くらいすっごく自分を甘やかしなさいよ…。変なところばっかり強くなっちゃって…」
頭を抱えたユカリが言葉を選んで優しい言葉ばかりかけてくれるから
尖っていた心が少しずつ真ん丸になっていくんだよ。
そしてハルは、わたしの歪だった心を少しずつ丸くしていってくれて
琴音と一緒に、優しさという幸せを吹き込んでくれて、その丸をいっぱいいっぱい大きくしていってくれた。
わたしとハルと琴音の思い出は、わたし達以外には作れない。
だから、それで十分だと思えた。
ハルの中に心の中にもわたしが少しでも居たらいいなぁ。
片隅にでもいいから。