【完】ボクと風俗嬢と琴の音
「にゃ~……」
ハルが出て行った玄関に行って、琴音が扉を見つめながら切なそうに鳴いた。
猫パンチを食らわせたって、最近冷たくたって、琴音の1番はきっとハルなのだ。
でも今ハルがいなくなった悲しい気持ちもすぐに忘れて、玩具で遊びだすのだろう。
ほんと、猫が羨ましい。
琴音、わたしはハルとあなたと離れて暮らし始めたら、暫くは悲しくて泣いちゃう日が多くなるかもしれない。
でも段々とそれも慣れていって、泣く回数が減って行って、良い思い出だなぁと思える日が来るのも嫌なんだ。
少し我儘かな?
だって悲しい記憶だとしても、ハルと琴音といた日々を忘れたくないから。
猫になりたかったけど、今は人間でもいいと思えるんだ。
悲しい記憶でも、あなたたちを覚えておけるのならば。
琴音と午前中の日向ぼっこ。
柔軟剤の香りがする彼女のお腹が鼻を掠めると、それだけで心が柔らかくなっていく。
12時前にスーパーに行き、念入りに食材選び。今日はピーマンが特売だから、ピーマンの肉詰めにしよう。
ついでにスーパーでお菓子も買ってっと。
最近コンビニには余り行かなくなった。
コンビニよりスーパーでお菓子を買った方が得だという事に気づいたから。
エコバックに買った品物をつめて
河川敷を通り過ぎて歩いた。
ここは何度もハルと一緒に歩いた道。