【完】ボクと風俗嬢と琴の音
「あ、はい。こんにちは。分かります
あの…ハルだったら休日出勤で会社に出ているので
…いませんけど」
そう言ったら、彼女は予想外の言葉を口にした。
「違うんです、今日は
琴子さんに用事があって」
栗色のサラサラの髪の毛。
吸い込まれそうな大きな瞳。長い睫毛が瞬きをするたびに揺れる。
通った鼻筋に、小さな唇。その唇には頬とお揃いのピンク色のリップがうっすらと浮き上がる。
すらりとした身長は小さくもないが、華奢だ。その華奢な体を包み込む淡いピンク色のワンピース。
生まれ変わるならば、こんな女の子になりたかった。
女の子の求める理想を全て詰め込んでいるような女性で、目が合うと静かに微笑んだ。
琴音は山岡さんが家に入ってきた瞬間にキャットタワー内にある小さな小屋に入って
黒目を大きくしながら何も言わずにこちらを見つめていた。
「あの、コーヒーでいいですか?」
「あ、ありがとうございます…」
気まずい空気。
インスタントコーヒーにお湯を落としていく。
その間、彼女はその場にちょこんと座り込み、少しだけ視線を動かしてリビングを見回していた。
コーヒーをテーブルに置くと、申し訳なさそうに頭を少しだけ下げ、「ありがとうございます」と言った。