【完】ボクと風俗嬢と琴の音
「あたしは…
ハルとは事情があって同居してるだけのただの同居人だから…
ハルの事をどう思ってるか聞かれたとしても、ただの同居人としか答えようがありません。
山岡さんがハルの事をどう思おうと、それはあたしには関係ない。
それにもう一月もすればお互いに違う家に引っ越しますので…
山岡さんが思っているような関係ではありません、あたしたちは…」
「それは本音ですか?」
静かだけど、突き刺すように尖っている。
彼女の一言には、そういった類の強さを感じられる。
怖いとかそんなんじゃなくて、痛い程本気なのがこちらにも伝わってくる。
「わたしは確かに…過去に世間で港区女子と言われるような事をしてきました。
琴子さんの言う通り、男漁りをしている尻軽女だったかもしれません」
「それはッ…。
あんな事言ってしまってごめんなさい…。
あたしはハルがあなたに憧れている事を知っていて…ずっとあなたの話を聞いていたから
だから、偶然あなたのSNSの存在を知って…ハルはすごく真面目な人だから」
違う。
言いたい事はこんな事じゃない。
それに、それは言い訳だ。
あんな事を言ってしまったのは、わたしが山岡さんに嫉妬していただけだ。
そんな子供染みた、ただの嫉妬だったのに。