【完】ボクと風俗嬢と琴の音
「多分そのSNSは正真正銘わたしのもので間違いありません。
わたしは初め、晴人くんの事を真剣には好きではなかった。…むしろ、ちょっと遊んでやろうっていうような気持ちがあって
だからそれに関しては、彼に対して謝らないといけない事が沢山あります。
けれどわたしは…彼と時間を重ねていくうちに、あの人の誠実さに触れて、段々と彼を本気で好きになっていきました。
男をお金と地位でしか見てなかったわたしを変えてくれたのは紛れもなく晴人くんだったと思います」
「そう、ですか…」
彼女の言いたい事はいまいち掴めないままだったが
彼女がどれだけハルを本気で好きだという事だけは痛い程伝わってきて
再びあの日彼女へ向けた敵意を後悔し始めていた。
攻撃をしたかったわけでもない。また、貶めたかったとも違う。
アレはわたしがハルを好きで、ハルをとられたくないっていう子供染みた嫉妬から出来たものであって
けれどその言い訳を並べてしまえば、自分の気持ちを彼女に対して包み隠さずに伝えるという行為と変わらなくて
この時のわたしには、それがどうしても出来なかった。
「晴人くんはああいう人だから…一緒に暮らしていたら彼の良いところをわたしよりは琴子さんの方が知ってると思います」
「だから、あたしがハルを好きだ、と?」
そう問うと、彼女は下を向いて口を結び、気まずそうに体を小さく縮こませた。
「ごめんなさい。何て伝えていいのか分からなくて…」