【完】ボクと風俗嬢と琴の音
「感動するよなぁー…」
「こりゃ名作だよ~ッ
えぇ…映画化されるんだ!
ハル、一緒に見に行こう」
琴子が何の気なしに言った言葉。
確かに帯には「映画化決定」と公開日と共にでかでかと書かれていた。
公開日・8月22日。
琴子がパタンと本を閉じて「やっぱり小説は小説にとどめておくのに限るよね~映画になった途端に駄作になってしまう場合もあるし~」なんて言ってる。
そうだよな。
その頃にはもう一緒に暮らしていないし、映画を見に行くなんて事もない。
そういえばこの1年で琴子とは色々な事を一緒にしてきたけど、映画は見に行った事はない。
互いに映画は結構好きだったけど、この部屋で見る借りてきたDVDばかりだ。
でも大画面もいいもんだよ。
互いに良いと思った小説の原作を
ポップコーンなんて頬張って、バター醤油かキャラメルかなんて揉めて結局ハーフにするんだ。
俺はアイスコーヒーを頼んで、琴子はきっとメロンソーダがあればそれを頼むと思う。
Lサイズでかすぎとか文句言っちゃうんだけど、きっと映画の最中に飲み干してしまうんだろう。