【完】ボクと風俗嬢と琴の音
って、俺なんて妄想してるんだろう。
叶いもしない未来の妄想をしてしまうなんて重症だと思う。
「なぁ」
「うん?」
「今度の土曜日どこか行かない?」
「いいよぉーーー!!!
どこ行く?!何するッ?」
そう提案したら、琴子は身を乗り出して嬉しそうに笑った。
「ん~?どこ行きたい?」
「あのね、さっき映画の話があったけど、今公開してる映画でね」
そう言って琴子は俺の方へ携帯画面をスクロールさせながら見せてきた。
お、意外。
意外にも王道っぽいラブロマンスが画面に写し出されている。
結構マニアックな物が趣味な琴子にしては珍しい事だ。
「主演の加藤裕くんが大好きなの~」
そういうミーハーな理由か…。
最近売り出し中の俳優加藤裕は身長は余り高くないけれど可愛らしい顔をしていて、演技派と絶賛されている。
やっぱり琴子のタイプって俺と正反対だよなぁ…。こんな小さな事でも落ち込んでしまうなんて。
「いいよ。行こう。
それで買い物もしよう」
「えー?インドア派なハルが珍しいね」
「琴子の引っ越し祝いに好きな物買ってやるよ」