【完】ボクと風俗嬢と琴の音
「なんで~?」
「弓香が死んでしまうのには納得が出来なかった」
「えぇー弓香が死んでしまうからこそ泣けるんじゃんか」
「俺は好きじゃないね、人が死んでしまって泣ける映画は
人が死んでしまって泣けるなんて当然の事だろう。
途中までストーリー性があったからこそもっとメッセージを伝えるのには素敵な結末っつーもんがあったと思うけど。
どうせ泣くならば悲しい涙より嬉しい涙を流したいもんだね」
「ひねくれものッ!」
「ひねくれもので結構!」
柔らかそうに見せて、意外にひねくれもので頑固。
そういうところも、嫌いじゃない。
ハルはそれでも熱心に映画のパンフレットに目を落としていて、わたしはチーズケーキを頬張りながら、その横顔を見つめていた。
ここのチーズケーキは外れだ。
中が柔らかすぎる。
わたしはもっと固めのハード系のチーズケーキの方が好みなんだ。
柔らかそうに見えても、固くて、そしてカラメルはもっと甘苦くて良い。
心の中で文句を言いながらもそれをたいらげた。そして午後からショッピングモールに出る。