【完】ボクと風俗嬢と琴の音


伝えたい事は沢山あったはずなのに、言葉にしてしまえば陳腐な物になってしまう。
それでもハルから貰った物は沢山あった。
同じ時間を長く共有して、互いに好きな物をシェアしあって、知らなかった世界を見せてくれた。
知らなかったアニメ。知らなかった漫画。知らなかった小説。知らなかった映画。
自分では見ようともしなかったものばかりだ。…でも、ハルが教えてくれた。

好きじゃなかった猫が大好きになった。
料理が好きになった。洗濯も晴れの日にするとこんなに気持ちの良いものだって
干したての布団がふかふかしているのも、それに包まれて眠る事がこんなに幸せだったという事も
掃除は今も嫌いだけど、人並みには出来るようになったんだよ?





何気ない生活の中に
幸せの種が散らばっていて
でもそれは小さすぎて見落としがちな物ばかりで
前までのわたしだったら、それを見つけるどころか踏みつけてばかりいて
でもハルに出会えたから、その種を一粒一粒拾い上げて、花を咲かす事が出来るだろう。
目に見えない小さな幸せだって、ひとつも見落とす事はないだろう。
何気ない日常の中で、あなたが教えてくれた事。


あなたは、わたしに、知らなかったわたしを見せてくれた人だったの―――――



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