【完】ボクと風俗嬢と琴の音
「でも、それじゃあさぁ…」
「もぉ~貢ぎたがりかよッ」
だけどこうやっていつも冗談ばかり言ってしまう。
本当はすごく嬉しかったくせに。
何気ない会話ばかり。
特別重要ではなかったと思う。
それでも誰と交わすかが大切なのではないかと知る。
初夏のショッピングモールをブラブラして
アイスクリームを食べて
たい焼きを半分こにしたり、どっちのクリームが多いか少ないか揉めて
ペットショップで、猫を見たり、でも琴音が1番可愛いねって
ゲーセンでゲームをして、その全てがハルとだったから、特別な日になるんだ。
とある雑貨屋で足を止める。
そしてハルの腕を強く引っ張った。
「欲しいものが見つかった」
そう言ってそれを差し出したら、ハルは明らかに変な顔をした。
手のひらの中におさまる、ガラスで出来た小さな猫の置物。
靴下を履いているような柄が、生意気そうな顔立ちが、とても琴音に似ていた。
これから先も琴音と一緒に暮らしたかった。
ハル同様。
わたしにとって、琴音は特別な猫だったから。
けれど、琴音を半分こは出来ない。
どんなに欲しくても、ハルの側から琴音を引き離すのは可哀想だし、琴音だってハルと一緒に暮らしたいだろう。