【完】ボクと風俗嬢と琴の音
「俺さ…3月に行った花見の時に琴子ちゃんと話したんだ…。
晴人には内緒にしてって言ってたんだけど、琴子ちゃん風俗は辞めるって言ってた」
「え?!」
琴子から、そんな話一切聞いてない。
何故俺に言ってなかった事を、優弥には言っているんだ。
そんな重要な事。
「昼職するって言ってた。
今考えたらさ、それってお前の為だったんじゃないかなーって。
琴子ちゃんは自分の職業に対する負い目みたいなところがあったじゃん」
「琴子は…俺にはそんな事一言も言ってなかった…」
どうしてそんな大切な事を優弥には話して、俺には一言も話してくれないんだ。
それを話してくれたのならば、今を少しは変えられたんじゃないのか。
いや、違う。
俺は確かに琴子を好きになってから、彼女に風俗という仕事を辞めて欲しかった。
でもそれを口に出来ずにいた。
だって俺は彼氏でもなんでもないし、ただの同居人だし
そんな言い訳ばかり並べて。
「言えなかったんじゃないの、かな?
実際風俗をしていたって事は事実だから
辞めたからといって過去を消す事は人には出来ない。
だから、琴子ちゃんは怖かったんじゃないかなって思う。
晴人に受け入れてもらえなかったらって」
「そんな……」
「今は昼職しているってユカリちゃんが言ってたよ」
「そう、なのか…」