【完】ボクと風俗嬢と琴の音

「だからお前もさー、素直になって」


「でも、やっぱり出来ないよ…。
それ別に俺の為ってわけじゃないかもしれないしさ」


そこまで言ったら、優弥の顔は険しくなった。


「お前は確証がなければ動けねぇ人間なのか。
情けなぇ男だな。
いいじゃん、お前は風俗嬢である琴子ちゃんを好きになったわけじゃねぇだろ。
相手のため、とか、邪魔になりたくない、とか
それって全部自分が傷つきたくないだけの言い訳にしか聞こえねぇ!
根拠がなきゃ相手に好きと言えないなんて、所詮お前の気持ちはその程度なんだよッ」



俺の知ってる優弥は、感情任せに人に怒ったりするような人間じゃない。
どちらかというと温厚で、ムードメーカーでお調子者なところもあるけれど、場の空気を読むのが上手くて
その優弥が、ディスク越し明らかに怒っているのが俺には伝わった。

ふがいない自分。
情けない自分。
相手の為、と言いながら自分を守ってばかりの自分。



情けなさ過ぎるよ。


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