【完】ボクと風俗嬢と琴の音
「さっき…仕事も辞めるって」
「うん、とはいえ引き継ぎとかもあるから、3か月後になるけどね」
「木村さんにとって仕事って恋愛より大切なものだと思ってた…
意外です」
「いや、あたしは恋愛よりかは仕事の方が大切なんだが?」
「じゃあ何で…」
「恋愛より仕事の方が大切ではあるが
仕事より’彼’の方が大切ではあるから。
彼は家庭に入ってほしいタイプらしいから、仕事はすっぱりと辞める事に決めた。
後悔はない」
俺なんかより、よっぽど男らしい人だ。
「そうだ、引継ぎと言えばアンタに任せたい仕事があるんだ。
明日にでも挨拶に言ってもらえる?B社のコンビニ本部なんだけど、ちょうどそこの担当の人も変わったばかりみたいでさ
あれだ、確かアンタと同郷だって言ってたぞ?めっちゃ美人」
木村さんから名刺を受け取っても
俺は木村さんの顔から目が離せなかった。
「明日伺います…」
だって木村さんは本当に幸せそうで
あんなに仕事が好きそうだったのに、何ひとつ後悔はしてないって顔をして
こんなにも幸せそうなんだ。
木村さんがこんな顔をするなんて、今までずっと一緒に仕事をしてきたのに初めてだった。