【完】ボクと風俗嬢と琴の音
「す、すいません」
「いえ、大丈夫ですから、あ………晴人くんかぁ~」
顔をあげたら、山岡さんが花のような笑顔が散らばった。
俺も思わず笑顔になって、床に散らばった資料を一緒に集める。
「こんな時間まで残ってたんだ」
「あ、受付嬢の事馬鹿にしたでしょ?
意外に雑用なんかもあって晴人くんが思ってるより忙しいんだから」
「馬鹿になんかしてないさ。
おつかれさまです」
拾い集めた資料を彼女へ渡すと、ありがとうと言って、頬を緩ませた。
あんな事があったのに彼女は気まずい素振りを一切見せずに、俺へとこうやって素敵な笑顔を見せてくれる。
「なんか久しぶりだね」
「あぁ、ほんと」
「同じ社内にいるのにね。
晴人くんの事はよく見かけるけど、なんか忙しそうに毎日走り回ってるから」
「あぁ、これからもっと忙しくなりそう。
営業部にいた木村さんが結婚する事になって
頼れる人だったから、抜けた穴を埋めるのに大変だよ」
「大丈夫だよ、晴人くんなら。
あ、そういえば!」
山岡さんは、大きな瞳をキラキラこちらへ向けて
何かを言いたげにしていた。
でもすぐに意地悪な顔をして「やっぱやぁめ~たぁ!」と顔をツンとして見せた。