【完】ボクと風俗嬢と琴の音
間違いなく、自分の中には勇気が足りなかったのだと思う。
傷つく事から逃げて、傷つかない選択ばかりを選び続けた。
ぬるま湯に浸かっている方が楽だったから。あえて、自分で楽な道ばかり選び続けてきた。
琴子のせいにしていれば、楽だった。
琴子が選んだ道だから――
琴子がしたいように――
琴子の幸せを願いたいから――
そんな風にかっこばかりつけて、自分の気持ちをちっとも大切に出来なかった。
自分の気持ちを大切に出来ないような奴が、誰かを幸せに出来るとは到底思えなかった。
もっと情けなくても良いじゃないか。かっこ悪くたっていい。なりふり構わずに、真っ直ぐに想いを伝えて入れたのならば、今こんな風に後悔ばかりの自分ではなかったはずだ。少なくとも。
あの時言えなかった言葉の欠片たち。
もう一度拾い上げて見たっていいんじゃないか?
まだ自分の中に伝えていない、大切な言葉が沢山ある。
君と見たい風景が沢山ある。共有したい喜びがある。それが悲しみだとしても
ふたりだったのならば、喜びは倍になって、悲しみは半分になる。俺にとって君はそんな存在だったから
空に雲が連なって浮かぶように
川に水が自然に流れるような
そんなどこにでもあるような景色を、これからも君と見続けていたいんだ――――
それでももし君がそんなの嫌だよ、と笑ったら
ハルとなんか一緒に居たくないって言われたとして
振られたら振られた時で、それでも今よりずっと美しい景色が目の前に広がっていく――ような気がする。