【完】ボクと風俗嬢と琴の音
「琴子ちゃんが来てくれて本当に助かってるわぁ~。
やっぱり若い人が入るとパッと明るくなるしね、それにあなたってとっても明るい女の子だからお客さんからの評判もとってもいいし
あ、お菓子食べる?」
「食べる食べる~!わ~い、わ~い」
オーナーが差し出したお菓子は、ハルの会社のお菓子だった。
最近コンビニにいってないから、新商品には疎かった。
健康を考えて、お子様でも楽しめる美味しいクッキーを作りました。そうパッケージに書かれていた。
一口食べると優しい味がして、疲れがフッと消えていくような気がした。
「ん~幸せ~。
ダイエットしてるのにこれはやめらんないのよねぇ」
「わかりますぅ。幸せ~」
オーナーの顔が綻んだ。
ハルの仕事ってやっぱり素敵。
自分では大した仕事していないって言っていたけど
お菓子業界はわたし達に沢山の癒しを与えてくれている。
そんな仕事に携わっているハルは、やっぱり素敵な人だよ。
オーナーとわたしの笑顔が鏡のように重なって、嬉しい気持ちになる。
午前8時から仕事が始まって
午後17時に仕事が終わる。
毎日働いていたって、給料は風俗嬢時代に比べて雀の涙程度。
最初は無理かも、と思ったけど
やれない事はない。むしろ、心はとても安定していたし、いつもどこかで抱えていた闇は太陽の光に照らされてその影を隠していく。
昼職を始めて、心からの幸せを感じる事が出来るようになった。