【完】ボクと風俗嬢と琴の音
「本気……」
「井上さんと美麗ちゃんは付き合ってないよ」
「それは…そうも簡単にいかない問題でしょう。
でも山岡さんは本気でハルの事が好きだよ。過去がどうかなんて関係ない。
山岡さんの過去がどうであれ、今の方がずっと大切なんだから。
だからそんな山岡さんの事、きっといつかハルも本気で好きになると思う」
「それならアンタの過去もね」
「え?」
「過去より今が大切というならば、それはアンタにだって言える事だってあたしは言ってんのよ。
アンタが誰よりも自分の過去を気にしてるって分かってるよ。風俗で働いてた事実は消えない。それは抱えて生きて行くしかないものだ。
アンタの言う通りなんだ、全部全部。
けれど今、あんたが生きてるのは過去なんかじゃない。今を生きている。
恋愛に、人を好きになる事に資格なんていらないよ。」
「そりゃーそうだけど……」
「井上さんは、琴子が好きだと思う」
「ないよ!それは絶対にないって言ってるでしょう?!」
「だってあたし聞いたもん。
優弥くんから、3か月前から井上さん腑抜けみたいになっちゃってるって
琴子がいなくなってから、毎日毎日落ち込んでるって
そんなの好き以外にありえなくない?!」
「そんなの知らないよ!」
「琴子、少しは自分の気持ちを大事にしてあげなよ。
離れてもその人の幸せを願えるくらい好きになれる人なんて人生で早々現れるもんじゃないよ。
それならば、井上さんの幸せが、じゃなくてもっと自分の幸せについて考えてよ………」