【完】ボクと風俗嬢と琴の音

「じゃあ、何でこのラブリーな子を?」


しかし可愛らしい。
恐らく短毛種の子猫。
琴音は子猫の頃から長毛種になるのが分かるくらい、毛が長い猫だったらしい。
けれどこの子は真っ白で、不思議な模様が入っていて、余り見た事のない柄の子だ。


「嫌だ、と言ったんだ。
でもその中でひと際目の惹くみすぼらしい猫がいた」


「みすぼらしいって……」


「本当にみずぼらしかったんだ!まるでネズミのようなッ
これマジで猫かよ?!みたいな…。
他の5匹の兄弟猫は結構しっかりとミャーミャ鳴きながら段ボールの中で動き回ってたんだが
こいつだけは小さくて、なんつーかボロボロで、とにかく汚らしかった」


「あんた、やっぱ口が悪いよ…」


「医者いわく、猫の世界つーのは厳しいもんがあるってことで母猫つーのは自分が産んだくせして、弱った子猫を育児放棄するらしいんだ。
元気な子を中心に育てていくらしい。
なんつーか非情な世界つーか…」


あぁ、この人はやっぱり優しい人だ。
大輝にはちらっと自分が幼き頃母親から虐待をされていたっていう過去を聞いた事がある。
虐待をされて育った子供は自己肯定感が低くなる。
彼はきっとそんな子猫を自分が幼かった頃と重ねてしまったのだ。

< 586 / 611 >

この作品をシェア

pagetop