【完】ボクと風俗嬢と琴の音
心がほっこりとしそうなお話し。
夕焼けでオレンジ色に染まった空に色々な色が交じり合って
とろりと今にも落ちていきそうな空を見つめながら、子猫の話をする大輝の顔は優しさそのものだった。
「つまりは、可愛いと」
「この俺が猫を可愛いだと?!
アレは猫ではないんだ、きっと…。
雪はきっと特別なんだ」
「雪って言うんだぁ!可愛いねぇ!
雄猫?!」
「あぁ、雄らしい」
「ハルが言ってたよ!雌猫より雄猫の方が人懐っこいんだって!」
ハル、と名前を出した瞬間ハッとした。
嫌だな、こんな時でもいつだってハルの事を思い出しちゃうのは。
未練がましいというか、なんというか。
実際未練がましいのだ、わたしは。
ぎゅっと手のひらの中のキーケースを握りしめる。もう使えなくなった合鍵だってこうして捨てられずに持っている。
誤魔化すように、オレンジ色に沈みゆく空を見つめていた。
海の水で濡れたはずの洋服は、すっかりと乾ききっていた。僅かに潮の香りが残るばかり。
大輝は真っ直ぐと前を向いていた。こちらを一切見ずに夕陽に向かって話し始めた。