【完】ボクと風俗嬢と琴の音
居候の身でユカリに恩があるわたしは断る事が出来ずに、憂鬱のままその合コンに参加する事になった。




「えっと、井上晴人です。…今日はよろしくお願いします…」



その合コンで、わたしと同じくらいつまらなさそうな顔をして
大きなため息が重なった男がいた。


見上げるくらい大男で、寡黙そうな彼は顔が驚く程小さくて
バランスの取れた目鼻立ちで、スーッと通った鼻先と、くっきりとした二重が印象的だった。




モテそう。
それが第一印象。



イケメンって様々だけど、万人受けするようなタイプで
それでいて、一流企業勤め。勝ち組ってこういう人の事を言うのだろう、と。
生まれ持った星は選べない。
でも確かに人より優秀な星の下に生まれた人間がいるのも事実なわけで。




「あの人、かっこいいし、目立つね」


と、隣にいたユカリがぼそりと呟いた。



「そう?」



と、返したけれど、実際は確かにかっこよくて目立つタイプだったのかもしれない。
そして、そういうタイプの人間が大嫌いだった。
生まれ持って得をしてしまうような人間は、劣等感だらけの人間の気持ちなんて理解しない人が多いのだから。



けれど彼は合コンが始まっても浮かない顔をしていて
皆の話の輪に入っていけなくて
つまらなそうにビールを片手に、携帯ばかり見ていた。


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