【完】ボクと風俗嬢と琴の音
「琴子は髪が短くても長くても可愛い。
それに金髪より茶色の方が似合うって言っただろ。
ほんと、可愛い~」
「や、それは照れると…。
あんま見んといて…」
「照れてるところも可愛い~
すっぴんでも可愛いし、目が小さくても可愛い」
「バカにしとるやろ…?」
「何を?」
大真面目な顔で可愛いと連呼をされるのだから
やっぱり敵わない。
「ちいさくて、かぁわいぃ~」
わたしがツンデレなら
こいつはデレデレで
女にこんな顔を見せるなんて、知らなかった。
1年も一緒にいたのに、知らない顔が沢山あった。
大きなハルの体が、すっぽりとわたしの小さな体を包み込むから
何度だって抱きしめて、愛しそうにキスを落としてくれるから
その度に心が右へ左へ忙しく揺り動かされるなんて、悔しいから絶対に言ってやんないんだ。
わたしの、全然敗け。
でも敗けでいいんだ。
太陽のような眩しい笑顔に立ち向かおうなどど、到底無意味な事。
だからずっとわたしの敗けでいい。