【完】ボクと風俗嬢と琴の音
「ちょっと、どこ触っとるんよ!」
「いいじゃん、琴子のケチ」
「ケチとか、そういう問題では………
ひゃあ…!!」
「琴子の可愛いところ、全部俺の独り占め
もう、誰にもみせませ~ん!」
そう言って、何度も何度もキスをする。
あぁずっとこうしていれたらどれだけ幸せか。
ベッドの中で、絡まり合う手も足も、全部ひとつだったら良かったのに
けれどそれじゃあお互いを抱きしめ合えない。どれだけ愛しているかなんて伝えきれない。
「ニャー!」
少し怒ったようにベッドに飛び乗ってきた琴音は、何故か不機嫌そうにわたしとハルの間を行ったり来たりする。
’わたしのご飯忘れてんじゃないの?!’まるでそう言わんばかりにニャーニャーと切なそうな声色で鳴き続ける。
「いま、何時?」
不意に疑問に思った事を口にする。
ハルは、枕の横にあった携帯を開き、目を擦りながら「7時45分だよ」と言った。
「やばっ」
「やばって、今日は日曜日だよ」
「だから言ったやん!
あたしが今しとる猫カフェの仕事は土日祭日関係ないって。
遅刻してしまうー!!!」
慌ててベッドから飛び起きて
用意を始めようとしても、ここには化粧品もない。勿論洋服だって。
仕方がない、今日はスッピンで、ハルに何か着る物を借りよう。…とはいっても、ハルの服のサイズがわたしに合うとは思えないんだけど。
あぁ…潮の匂いがしみ込んだ服を着ていくしかないのだろうか。海に落ちるなんて…大輝のせいだ!絶対。
洗面所で顔を洗って、髪の毛を気持ちばかり整えてると
ハルが「はい」って言って昨日着ていたわたしの服を差し出す。
綺麗に畳まれていたその服からはほのかに柔軟剤の香りがした。