【完】ボクと風俗嬢と琴の音
しかし当の彼は自分はヘラヘラと笑っていればその場が収まると思っているらしく
その態度が更にわたしをイラつかせた。
そしてぷっちーんと切れてしまった。
これは悪い癖。
場の空気を壊さないように、笑ってやり過ごす。それってすごく大人な事だとは思う。
でも弱いものイジメにしか思えなかったし、見えなかった。
本気で切れると無意識のうちに故郷の博多弁が出てしまう。
上京してきてからは気をつけているつもりなのに。
わたしとその男の言い合いは、更に場の空気を凍りつかせたけれど
それまでヘラヘラと笑ってやり過ごしていた彼が、わたしの手を掴み走り出した瞬間
お店を出て、風を切って走り出した瞬間
ドキドキするような、気持ちが高揚していく感覚を味わった。
これがわたしと’ハル’の出会い。
どこにでもあるような合コンで
全く正反対のふたりが
大都会、東京で巡り合う奇跡の確立がどれだけかなんて
この時は知る由すらなかった。