【完】ボクと風俗嬢と琴の音

「ハァ、ハァ」


人通りから少し離れた場所で、ハルは慌てて手を離して
「ごめん!」と大きな体を小さくさせて謝ってきた。


「ハァ、ハァ」


息切れが止まらない。
だって猛スピードだったもん!
あんたとわたしの足の長さを考えなさいよ。
手を引っ張られて、一緒に走り出すというよりかは引っ張られて引きずり回されてる感じ。


それでも全然息切れしていないハルの額にはうっすらと汗が滲んでいて、街灯に照らされてそれが光っていた。



「ん~…首が疲れる!」


そう言ったら、ハルはハッとして、身をかがめて、こちらと目線が合うように背丈を合わせてくれた。
すぐに優しい人なんだと理解した。



「さっきの方言……」


「あぁ、あたし出身が九州だから。
感情が高ぶったらついつい博多弁が出ちゃうの」


「あ!それ分かる!
俺も北海道出身だから、熱くなって話してると北海道弁がたまに出て
ハァ?!って顔されんの」



「ふぇー、あなた北海道出身なんだぁ。
それはそれは正反対の場所で生まれたわけだ。
だから肌が白いの?」


「いや……それよく言われるけど偏見だから。
北海道人だって地黒の人だって山ほどいるし」


「あはは~!確かに~!九州にだって真っ白の人は沢山いるわ!」


わたしが笑ったら、ハルもククッと小さく笑う。
その顔が、体に似つかわしくなく可愛くって
思わずハルの手を引っ張る。


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