【完】ボクと風俗嬢と琴の音
ゴロリとコンクリートの上に寝転ぶと、まんまるの月が空にぽっかりと浮かび上がっていた。
「ちょ!!汚いよ!」
「見て!見て!月、ちょ~きれ~!!」
「あ、ほんとだ…」
人気のない道の真ん中で
アスファルトの上で転がる大人がふたり。
はたから見ればどう見ても不審者。
でも何か、さっきまで怒っていたのに、怒りを通り越して可笑しくなってしまい
月の浮かぶ青白い空に向かって大声で笑いだしてしまう。
「ぷーーーーーーあっはっはっはっは!!!
汚ねー!ちょ~!!汚ねぇーー!!
でも月がちょ~きれー!おっかしー!!!あははは!!!」
「Fair is foul,and foul is fair」
「何それ?!いきなり外人になんの止めて!!」
寝転んだアスファルト、ごろりと横を向いてハルを見たら
彼の鼻筋のよく通った横顔が見えて、大きな目を空へ向けて月へと手を伸ばす。
「’きれいは汚い、汚いはきれい’」
「シェイクスピア?」
「知ってるの?!」
驚いたようにハルは体を起こして、こちらを見た。