【完】ボクと風俗嬢と琴の音

「ベランダで良かったら」


「え?マジ?」


「夜だから、静かにね?」


「ありがとう!!あなたいい人だね。ゲロ吐いても介抱してくれたし。」


空っぽになっていた缶コーヒーの空き缶を渡したら彼女はそれを受け取りベランダへ出て行った。


…しかし後ろ姿も小さいな。
子供みたいだ。




てゆーか終電間に合うだろうか。
てか…さっき倒れる前に家がないって言ってたな…。


彼女がベランダで煙草を吸っている間、琴音のトイレ掃除をしながら色々と考えていた。
トイレ掃除を終えて、昼間に出したコーヒーカップを洗っていると




「いのうえ、はれと?」


リビングに戻ってきた琴子が、テーブルに乗っていたダイレクトメールの葉書を見て首を傾げている。


「はれとじゃない。’はるひと’」


「ああ!なるほど!」


「てゆーか俺合コンで自己紹介したよね……」


「だってあなたの声小さいんだもん!
ぜんっぜん聞こえないよ!」


座椅子で寝転んでいる琴音に寄り添って、ごろりと横になりながら言った。
なんつー無防備な姿。
仮にも俺は男で、ここは男の一人暮らしの部屋だぞ?!(猫もいるけどさ…)



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