【完】ボクと風俗嬢と琴の音
でもいいじゃん。
人は汚いもの。
それならば、本性を曝け出してくれた方が全然楽だ。
大きくてブカブカなティシャツからは、抱きしめられた時と同じ柔軟剤の香りがした。
シーツからも同じ香り。
そして、布団で丸まって眠る琴音からも
夜の匂いとは正反対な、まっさらな香り。
そのティシャツを脱ぎ捨てて、茫然と立ち尽くすハルのズボンに手をかける。
本性を見せろ。
舌を出しながら、上を見つめると
そこには真っ黒な瞳が悲しそうに揺れて
脱がされたズボンをサッとあげた。
「止めろって!」
突き放されたように強い言葉が口から溢れ出して
ハルは座椅子に座って、ペットボトルのまんま水を口に含んだ。
「本当にそういうつもりはないんだ。
何を誤解してるのかは知らないけど…」
「はぁー?!」
布団で眠っていた琴音が耳をぴくつかせてこちらを見て
迷惑そうな顔をしたかと思ったらすぐに目を閉じて体を丸めた。
「服着ろって!」
そう言って、ハルは床に投げ捨てられたティシャツを手に取って、乱暴にわたしへ被らせた。
いや、これじゃあまるでわたしが盛りのついた猫じゃないか。