【完】ボクと風俗嬢と琴の音
「それコンタクトでしょ?
外しなよ。目に悪いよ」
「んー…、でも度が入ってるし、2ウィークだから捨てるのもったいないなぁ…」
「ケースとか洗浄液あるよ。目に悪いから外しなよ。
つーか…俺も外し忘れてた…」
「それ普通、忘れる?」
ぷっと笑うと、ハルも釣られたように笑いだした。
ふたりで一緒にコンタクトを外して、何となく目が冴えてしまったのはハルも同じらしく
その日は夜通し話し込むことになる。
不思議な空気を持つこの男と、我関せずって態度を見せて眠りこける猫と共に
柔らかい時間が流れていくのは久しぶりだった気がする。
コンタクトを外して視力を失った世界はぼやけて見えたけれど、わたしには分かる。
目の前の人がどれだけ優しい顔をしているのか、分かる。
「ハルって彼女いないの?」
「ずーっといない」
「え?!マジ?!童貞とか?!」
「だからさぁ~…そういう事を口にするのは辞めなさい!女の子なんだから!」
「あはは~お母さんかよって!
でもモテるでしょ?!性格はともかく、容姿だけで寄ってくる馬鹿女は沢山いそう!!
って~!!馬鹿女のあたしに言われたくはないだろ~けどね~!」