【完】ボクと風俗嬢と琴の音
「それに、少しだけ嬉しいんだ」
「嬉しい?」
「東京に出てきて2年ちょっと…。
一人で家に帰るのは寂しかったりしたし…
友達っても友達らしい子はユカリしかいなかったしさぁ~。
そのユカリにも自分の生活ってのがあるから、そうそう構ってもらえないし
仕事して家に帰ってきて時たま何の為に働いてるのとか生きてるのとか分かんなくなる時もあったし」
「あ、それ何となく分かるかも」
寂しがりやって訳ではなかった。
でも都会すぎるこの街で
何となく過ぎていく毎日の中で
ひとりぼっちだなぁって思う日があって
だからこそ、琴音を飼ったのかもしれない。
「それに猫ちゃんがあんなに可愛い生き物だっていう事も知らなかった!!」
「俺も…琴音が人に懐く猫だって事は知らなかった…」
「知能レベルが同じだと思われてる節があるーーー!!!」
「あはははー!それはあるかも!!」
「あぁ!あたしの事馬鹿にしたぁ!!!」
「馬鹿になんかしてないよ」
「でも、ハル……。
あんまり簡単に人を信用しないほうがいいよ?」
「え?」
「あたしみたいなのと暮らそうとか簡単に言っちゃってさ。
もしもあたしが詐欺師とかで
数か月後にハルの貯金全部盗んで姿くらますかもしれないんだよー?!
都会はめっちゃ怖いんだから!簡単に人を信用しちゃいけないって!!」