エリートパイロットの独占欲は新妻限定
ほかの女の人との仲を疑った挙句、恨みつらみをぶつけるように感情を爆発させた女など、きっと智也もお断りだろう。いくら慕っていた先輩の遺言とはいえ、これ以上面倒はみきれないと見限るに違いない。
がっくりと肩を落とし、ポーンと蹴った足もとの石がコツンとなにかにぶつかる。男性の靴だった。
ビクッとして視線を上げた先にあった顔を見て体がすくむ。智也だったのだ。
「なんで――」
由宇が言い終わるより早く、智也は腕を掴んで立たせたかと思えば、そのまま強く抱きしめた。
「由宇、ごめん」
「……どうして? ひどいことを言ったのは私なのに」
謝るのは、香澄との間になにかがあったからなのか。由宇の言葉がすべて真実だったからなのか。
「由宇はなにも悪くない。全部俺のせいだ」
やっぱり結婚生活は終わりなのだ。由宇を愛そうとしたけれどできない。そういう話なのだろう。由宇を抱きしめるのは良心の呵責からくる償いだ。