エリートパイロットの独占欲は新妻限定

◇◇◇◇◇

その夜、由宇は和幸の部屋で遺品整理をしていた。

亡くなるまでの三ヶ月間は入院していたため、病室にあった荷物も結構な量。ここ一週間は忙しなくて手をつけずにいたが、ダンボールに詰めて持ち帰ってきたものをひとつずつカーペットの上に出していく。

入院中といえど常に身だしなみに気を使っていた和幸らしくブラシやシェーバー、コロンなどもあり、そういった類のものがダンボールから出てくるたびに生前の姿を思い出して胸が熱くなった。

和幸が愛用していたB5サイズの手帳は日記のように使われており、その日の出来事が几帳面な字で綴られている。治療法についてだったりその日の病院食の感想だったり、看護師と交わした楽しい会話もあって思わずクスッとさせられる。

そういえば、そんなこともあったよねと懐かしくなりながら読み進めていると、その間からはらりと紙が舞い落ちた。


「これ、なんだろう」


手のひらサイズに折りたたまれた紙を開くと、一番上の〝由宇へ〟と書かれた文字が真っ先に目に入った。由宇への手紙らしい。

――えっ、まさか遺言?
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