エリートパイロットの独占欲は新妻限定
驚きつつ目を走らせていくと、そこにはひとり遺して逝くことへの謝罪と、これまでの感謝が綴られていた。その言葉のひとつひとつに心が揺さぶられ、鼻の奥がツンとしてくる。
そうして最後の方まで読み進めた由宇は、ある一文を見て目を真ん丸にした。
【真島くんと幸せになってほしい】
しっかりとした筆跡で彼になら由宇を託せると、最後の願いとして書かれていたのだ。
お父さん、どうして……?
人生の終わりに願うのが自分の生への執着でなく、娘の幸せただひとつだなんて。
予想もしていなかった遺言を目の当たりにして心がざわつく。
最後の最後まで心配をかけるほど、自分は大人になりきれていなかったみたいだ。なにかにつけて口出ししてくる父親に『もう大人なんだから大丈夫だってば!』と口ごたえすることもあったが、和幸にしてみたら小中学生と大して変わらなかったのかもしれない。
『いつまでも子どもは子どもなんだ』
そう言っていたのを思い出す。