エリートパイロットの独占欲は新妻限定
両親が離婚したのは、由宇が小学六年生のときだった。もともとパパっ子だったため、自然な流れで和幸と暮らすことに。それからは母親の代わりに家事をこなし、父娘ふたりで寄り添って生きてきた。
大学四年生になったとはいえ、娘を置いてひとりで旅立つのは心残りだったのだろう。それを和らげるために智也に託したくなる気持ちは、なんとなくわかる。もしも由宇が逆の立場だったら、和幸に新しい奥さんを探したくなっただろうから。
和幸が自分のかわいがっていた後輩にすがる思いでお願いしたのも、それと同じなのだろう。
それが和幸の願いであって、それを叶えてあげれば安らかに眠れるのだとしたら……。
ふとそばに置いていたスマートフォンが着信を知らせて鳴り響く。
ドキッとして手にしてみたら見知らぬ番号が表示されていた。
きっと彼だ。
高鳴っていく鼓動がスマートフォンを持つ手を動揺させる。震える指先で応答をタップして静かに耳にあてる。
「……由宇です」
緊張して声まで震えた。