エリートパイロットの独占欲は新妻限定
一年前に余命宣告を受けてからは入退院を繰り返していたため、家にいない日が続くのはざら。今も入院中で、病室にさえ行けば大好きな笑顔に会える気がしてならない。
「無理もないよ。大切な家族がこの世からいなくなったんだ。受け止められなくて当然」
優しい言葉が胸に染みる。
智也は、和幸が緩和ケア病棟に移ってから度々お見舞に顔を出し、訪れた国での出来事をいつも楽しく話して病室を明るくしてくれていた。束の間病気を忘れられるようで、和幸の表情が和らぐ時間でもあった。
『真島は優秀な副操縦士なんだ。機長になるのもすぐだろう』
そう言って由宇にどこか自慢げに話した和幸を思い出す。
機長の和幸と副操縦士の智也はペアを組んで飛ぶことも度々あったらしく、かわいい後輩だというのが話す様子からひしひしと伝わってきたものだ。
「真島さんにはよくしていただいて……。闘病中はもちろん葬儀が終わってからも、こうして何度も足を運んでいただけて父も喜んでいると思います」