エリートパイロットの独占欲は新妻限定
ひとまずそう答えて切ろうと耳から離しかけたが、智也の声に吸い寄せられる。
『おやすみ、由宇』
「えっ」
息が漏れただけと変わらない声が口から漏れた。
〝由宇〟って!
いきなりの呼び捨てに心臓を撃ち抜かれた気がした。
胸を大きく弾ませるばかりでおやすみと返すのもままならず、気づいたときには通話が切れていた。
スマートフォンを握りしめたまま目をまたたかせる。
「〝由宇〟だって……」
みるみるうちに顔が赤くなり耳までカーッと熱くなっていく。騒ぎ始めた胸はどうにも止まらず、由宇を翌朝まで翻弄したのだった。