エリートパイロットの独占欲は新妻限定
光るリングに重ねる未来
智也のプロポーズを受けてからの四日間、由宇は引き払う予定になっている自宅の片づけに奔走していた。
考えるのは当然ながら、これからの結婚生活についてである。
彼の家族構成はもちろん、どこに住んでいるのかも由宇はまだ知らない。それどころか智也に関する情報のほぼ百パーセントが未知なのだ。
和幸の遺言に導かれるまま結婚を了承してしまったが、本当にこれでよかったのかという迷いももちろんある。
もしもあの夜、和幸が遺した手紙を見つけていなければ、由宇はきっと断っていただろう。まるで和幸が見えない力で由宇に読ませたように思えてならない。
「お父さん、ちょっとずるいよ」
思わずそう呟く。
たった一枚の手紙で由宇の未来が百八十度変わったのだから。唇を尖らせて遺影を見ると、〝まぁそう言うな〟と笑って返された気がした。
その日の夕方、智也が再び由宇の自宅を訪れた。
「ただいま、由宇」