エリートパイロットの独占欲は新妻限定
着替えてきますと小さな声で言って、そこから弾かれたように二階へ向かう。あまりのインパクトのため、まるでピンボールみたいに途中あちこちの壁に手や肩をぶつけた。
あまり待たせるわけにはいかないと、クローゼットからAラインでケーブル編みのニットワンピースを手早く選ぶ。本当だったら、鏡を見ながらもっとしっかり選びたかったがそうもいかない。
とにかく急がなくちゃと慌てたせいで階段を踏み外しそうになった。ドドンと大きな音を立てたため、智也が「大丈夫? なにがあった?」とリビングから顔を出したくらいだ。
そそっかしいというか、あわてんぼうというか。相手は智也というしっとりとした大人なのに、これでは本当に不釣り合いもいいところ。クスッと笑われ、ここでも再び赤面だった。
乗せてもらった智也の車は真っ白な車体が美しいスポーツタイプ。車に疎い由宇でも知っている外国産の高級車だった。
過去にかろうじてひとりだけいた彼氏は免許証を持っていなかったため、移動は常に公共の乗り物。父親以外の男性の運転する車の助手席は初めてのため、ものすごく落ち着かない。
「そんなに堅くならなくても大丈夫だよ」
背筋をピンと伸ばして座っているのがバレていたようだ。智也はチラッと由宇を見て、ポンポンと頭を撫でた。