エリートパイロットの独占欲は新妻限定
緊張とは違う意味で鼓動が跳ねる。
ただ一緒にいるだけで翻弄されてばかりなんて本当に大丈夫? 結婚するんだよ?
自問しても、自信のある回答は見つけられなかった。
智也が由宇を連れてきたのは、街の喧騒から外れた場所にあるビストロだった。ライトアップされた赤レンガ造りの外観はクラシカルでとても目を引く。
智也に続いて店内に入ると、控えめな照明が大人の隠れ家的な雰囲気を醸し出している。高級フレンチやイタリアンの店でないのはありがたい。智也といるだけでもそわそわするのに、店までランクが高かったら呼吸もままならないだろう。
黒づくめのスーツを着た初老の男性が、由宇たちをテーブルに案内した。
「由宇、お酒は?」
メニュー表を見ながら智也に聞かれ、「あまり得意じゃないです」と正直に答える。
ビールは苦いし、ワインは甘いのか酸っぱいのかわからない。
「そっか」