エリートパイロットの独占欲は新妻限定
ふたりそろって和幸の遺影に視線を向ける。パイロットの制服に制帽を被った和幸は、精悍な顔つきで由宇たちを見つめ返した。
「真島さん、本当にありがとうございました」
この家を処分したら、智也にももう会うことはないだろう。寂しさを感じるのは、和幸の思い出話をできる数少ない人間だからなのかもしれない。
ふたりですら住むのに広い戸建は由宇ひとりでは持て余すため、生前和幸が不動産屋を通して売却の手配を済ませていた。一ヶ月後の期日までにアパートを見つけ、ここを引き払わなければならない。
思い出の詰まった家ではあるけれど、ひとりで暮らすには寂しすぎるから。
「三杉さんには、くれぐれも由宇ちゃんをよろしく頼むと言われているから」
「なんだかすみません。押しつけられちゃいましたよね」
娘を頼むなどと言われたら、それこそ負担に感じただろう。かといって死期が近づいている和幸にノーだと言えるはずもない。
「もう大丈夫です。本当にありがとうございました」