エリートパイロットの独占欲は新妻限定
どことなく残念そうな智也を見て、飲めると言えばよかったと後悔した。
ただでさえ十歳もある年の差。お酒もたしなめないのでは子どもも同然だ。
「ま、俺も運転があるから飲めないし、スパークリングウォーターにしよう」
「……すみません」
優しい智也の言葉に救われたものの、次回はちょっとくらいなら飲んでみようと密かに決意した。
メニューのチョイスは全面的に智也に任せ、運ばれてきたスパークリングウォーターで乾杯する。
「由宇、今日は本当にありがとう」
「いえ、私の方こそ……」
智也には感謝しかない。先輩の願いを忠実に守るためだけに、愛のない結婚に踏み切ろうとしているのだから。
「改めて、これからよろしくね」
「こちらこそどうぞよろしくお願いいたします」
両手を膝の上にそろえて頭を下げる。
「だから由宇、堅くなるなって。俺、そんなに緊張させてる?」