エリートパイロットの独占欲は新妻限定
「サイズも大丈夫みたいだな。さすが三杉さん」
「父から聞いたんですか?」
「そう。由宇に直接聞いたら、なんで?って不審に思われるだろう?」
たしかにそうだ。でも、いきなりプロポーズよりは心の準備ができていたかもしれない。
そういえば、とふと思い出す。病室で和幸とふたりでいたときに、お菓子の袋を留めたりするカラータイを薬指に巻いたことがあった。病気で指の細くなった和幸が『俺と由宇、どっちが細いか比べてみよう』となったのだ。
あのときうまく薬指に誘導した和幸の巧みさには感心してしまう。
改めて薬指にはまったリングを顔の前でかざす。
「本当に綺麗」
キラキラと光るリングは角度を変えるたびに違う輝きを放ち、自然と笑顔になる。
「そうやって喜ぶ由宇もかわいいよ」
「か、かわいくはないですからっ」
不意打ちで褒められ、恥ずかしさに俯いた。
智也はいったいどういうつもりで由宇を翻弄するのか。彼の真意が掴めない。
恋愛経験も少ないのに、いきなり十歳年上の大人の男を相手にするのだからそれも当然だろう。
その後、フォアグラのコンフィやキンメダイのルーローなど、運ばれてきたコース料理はどれも絶品で、由宇はひとときの贅沢を味わったのだった。