エリートパイロットの独占欲は新妻限定
愛される努力
一週間後、由宇は羽田空港にあるスカイジャパンエア、通称SJAのバックオフィスへやって来た。和幸が残したままにしている荷物を受け取るためだ。
パイロットとしては無理だとしても、いつかはまたこの場所へ戻りたいと願っていたため籍を置いたままになっていた。
由宇の左手の薬指には、智也からもらったエンゲージリングが輝きを放つ。あれから智也とはフライトの都合で会っていないが、メッセージアプリでは何度かやり取りをしている。
内容はフライトのこぼれ話や日々のちょっとした出来事など、いつも和幸の病室でしていたようなもの。近々両親に紹介したいというメッセージも送られてきて、それを読んだときには妙にそわそわとした。
オフィスは幼いときに一度だけ、和幸に案内されて来たことがある。ちょっとした職場見学みたいで、子どもながらにワクワクしたものだ。精悍なパイロットと美しいキャビンアテンダントを見てポーッとしたのも、よく覚えている。
エントランスにあるタッチパネルで指定されたナンバーを呼び出すと、しばらくして三十代の女性が現れた。
「このたびはご愁傷様でした」
「こちらこそ長い間、父が大変お世話になりました」