エリートパイロットの独占欲は新妻限定
同じ想いを抱える人の言葉が胸をつく。つい気を許して浮かびそうになった涙を必死に止めた。
「今日はどうしたの?」
「父の荷物を受け取りにきたんです」
「あぁそうか。ロッカーがそのままになっているだろうからね」
その彼は小刻みに頷きながら少しだけ遠い目をした。
「由宇ちゃん、なにかあったら遠慮なく頼っていいんだからね」
「はい、ありがとうございます」
由宇の肩を励ますようにトンとして、彼はその場から去っていった。
その後も次々と同僚たちから声をかけられ、そのたびに和幸がここで慕われ楽しく仕事をしていたのだと知り、胸が熱くなる。素敵な仲間に囲まれて幸せだったのだと思うと、少しだけ心が安らぐ思いがした。
ロッカーの荷物を紙袋に入れオフィスを後にした由宇は、久しぶりに空港内を歩いてみることにした。
金曜日の午後のターミナルは、これから出発を控えた人や観光客と思われる人で賑わっている。